「HP ENVY 13 x360」高性能と高コスパを両立したRyzen搭載の13.3型2in1 PC
日本HPの「HP ENVY 13 x360」シリーズは、13.3型タッチ対応液晶ディスプレーと360度回転するヒンジ機構を備えたコンバーチブルタイプの2in1 PCだ。利用シーンに合わせて4つのモードに変形することができ、ノートPCとしてもタブレットとしても使うことができる。プロセッサーに最新世代のRyzenを採用しており、高性能と高コストパフォーマンスを両立しているのも大きな特徴。今回は、ラインナップのうちRyzen 5 2500Uを搭載した「スタンダードモデル」を試すことができたので、実際の使い勝手やパフォーマンスなどを紹介していこう。
機能的で洗練された筐体デザインを採用
日本HPの「ENVY」は、上質さや、モノとしてのこだわり、快適な操作性を追求したプレミアムPCのブランドだ。洗練された美しいデザインで人気があり、タブレットからデスクトップまで幅広いラインナップが揃えられている。
今回紹介する「HP ENVY 13 x360」は、そのうちモバイル向けラインナップの中核モデルにあたる製品。名前からも推測できるように、13.3インチのタッチ対応液晶ディスプレーと360度回転するヒンジ機構を備えたコンバーチブル型の2in1 PCだ。
本体を手にとってまず印象に残ったのが、その質感の高さ。筐体にはアルミニウム合金が使用されており、金属ならではのひんやりとした感触を楽しむことができる。剛性も高く、天板やキーボード面をちょっと押したくらいではたわんだりしないのも好印象。バッグに入れて持ち運んだり、カフェや電車のホームなどで使っていても安心感があった。
本体サイズは幅306mm×奥行き215mm×高さ15.0~16.0mm、重量は約1.31kgと、このクラスの2 in 1 PCとしては軽量コンパクトな方。天面や底面が凹凸の少ないフラットな形状になっているのに加え、ボトムケースのエッジ部分が薄いため、ブリーフケースなどにも収納しやすいのが嬉しい。
「ENVY」シリーズ共通の特徴でもあるが、細部のデザインへのこだわりは相当なものがある。スピーカーグリルのパンチングが幾何学的なパターンになっていたり、ヒンジ部分にさり気なくダマスカス鋼模様があしらわれていたりして、凛とした独特の佇まいが感じられる。
といっても、デザインが優先されて実用性がおざなりになっているわけでない。たとえばインターフェイス。最近の薄型ノートとしてはかなり充実しており、本体左側面に電源コネクタとUSB3.1 Gen1、電源ボタン、ヘッドフォン出力/マイク入力コンボポート、MicroSDカードスロットが、右側面には音量ボタン、USB Type-C 3.1 Gen2、USB 3.1 Gen1が搭載されている。アダプターなどを介さなくても一般的なUSB機器をつなげて使用できるのは、やはり便利だ。
また、搭載されているWEBカメラが「HP Wide Vision HD Webcam (約92万画素) / IR カメラ」になっており、顔認証の精度が非常に高いのも本機の特徴のひとつになっている。
利用シーンに合わせて4つのモードに変形可能
液晶ディスプレーはフルHD(1,920×1,080ピクセル)のIPSパネルで、視野角が広く色再現性も高い高品位なタイプ。マルチタッチに対応しており、指で画面に直接触れてフリックやピンチイン・アウト、スクロールなどの操作を行うことができる。
ヒンジ部分はクルッと360度回転する独自機構が採用されており、ディスプレーの角度を変えることで「ノートブック」、「タブレット」、「テント」、「スタンド」の4つのモードに変更できる。
そのうち「ノートブック」は、通常のクラムシェル型ノートと同じ感覚で使用することが可能。メールや文書の作成、写真の編集などキーボードやタッチパッドを使った細かい作業に適したモードだ。
本機の場合、キーボードはキーピッチが約19mmあってかなりタイピングしやすい印象。キーストロークは浅めだが、クリック感がしっかりあって打鍵音も低めなので、静かな場所でも作業しやすく感じた。バックライトが内蔵されていて、暗所でキートップの文字が見やすいのも◎。タッチパッドはクリックボタン一体型でスペースが広く、細かいカーソルの移動もやりやすかった。
「タブレット」はディスプレーを360度回転させてタッチ操作のみで使うモード。本体の質量が1.31kgあるので、片手でホールドして長時間操作するのは結構大変だが、ソファに寝そべってちょっとWebを検索したいというときや、YouTubeで番組を楽しみたいときなどには便利だ。10インチクラスのタブレット端末に比べると画面サイズが大きいため、電子書籍のルビや漫画の吹き出しなど、細かい文字が見やすいのもメリット。レイアウト固定でリフローしないタイプの電子雑誌も読みやすかった。
「テント」はヒンジ側を上にしてテント状に開いて使用するモード。動画や静止画の鑑賞、Webの閲覧などに向く。設置面積が少なくてすむため、狭い机の上にも置きやすいのがメリットだ。
「スタンド」はキーボード面を下にしてディスプレーを起こした状態で使用するモード。「テント」モードより設置時の安定感があるので、新幹線や飛行機の座席テーブルで動画やWebを閲覧する場合は、こちらの方が向いているかもしれない。
本機で動画や音楽を視聴していて驚いたのが、サウンドのクオリティだ。高級オーディオメーカーのBang & Olufsenと共同開発したクアッド・スピーカーが搭載されており、モバイルPCの内蔵スピーカーとは思えない臨場感にあふれたサウンドを味わうことができる。プリインストールされている専用アプリを使えば、好みに合わせてサウンドを細かくチューニングすることも可能なので、動画や音楽を視聴する際に活用してみると楽しそうだ。
RyzenプロセッサーとRadeon Vega グラフィックスを搭載
「HP ENVY 13 x360」はCPUなどの構成の違いによって、次のように2モデルに分かれている。
ベーシックモデルとスタンダードモデルの主なスペック | ||
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モデル名 | ベーシック | スタンダード |
CPU | AMD Ryzen 3 2300U | AMD Ryzen 5 2500U |
メモリ | 4/8GB | 8GB |
グラフィックス | Radeon Vega 6 Graphics | Radeon Vega 8 Graphics |
ストレージ | 256GB SSD(PCIe NVMe M.2) | 256GB SSD(PCIe NVMe M.2) |
バッテリー駆動時間 | 11時間 | 11時間 |
価格 | 89,800円(税抜)~ | 104,800円(税抜)~ |
今回試用したのはスタンダードモデルの方で、AMD Ryzen 5 2500U(2.0GHz/最大3.60GHz)と、8GBのメモリ、256GBのPCIe NVMe M.2対応SSDが搭載されていた。グラフィックスはCPU内蔵のRadeon Vega 8 Graphicsだ。
AMD Ryzenの採用によりインテルCPUを採用した同クラスのPCに比べて価格がかなりリーズナブルになっているが、パフォーマンス面で物足りなさを感じることはないのだろうか?
そこで、いくつかのベンチマークを実行して性能を測ってみることにした。まず、Windows 10のシステム評価ツールを実行したところ、プロセッサが9.1、プライマリハードディスク(PCIe NVMe M.2対応SSD)が8.8という非常に高い結果になった。グラフィックスも8という数値で、基本性能がかなり高いことがわかる。
CINEBENCH R15では、CPUのマルチコアが569cb、シングルコアが134cbという結果。ライバルのCore i5-8250Uと比べると、シングルコアは若干低めだが、マルチコアはi5のそれを優にしのぎ、i7-8550Uにも匹敵する結果となった。TDP(熱設計電力)が15Wの省電力プロセッサーとしてはパフォーマンスは十分高いと言えそうだ。
続いてCrystalDiskMarkでストレージの性能をチェックしてみたところ、シーケンシャルリードが2500MB/秒前後になった。NVMe SSDだけあって非常に高速。体感的にもHDDとは比較にならないくらいサクサク動作した。
次にパソコンの総合的な性能をチェックするためPCMark 8を実行したところ、スコアが3475となった。また、PCMARK 10では3248になった。
PCMARK 10のスコアの詳細をみると、基本性能を示すEssentialsが6579、ビジネスアプリのパフォーマンスを示すProductivityが5214と高い数値になっており、普段使いには十分すぎる性能を持っていることがわかる。ライバルのCore i5-8250UやCore i7-8550Uを搭載したノートPCと比べても差は小さく、ほぼ同程度の性能となっている。
グラフィックスはパフォーマンスに優れたVegaアーキテクチャーのGPUなので、Core i5-8250Uなどに内蔵されているインテル UHD グラフィックス 620より高めのスコアが期待できそうだ。そこで、3DMARKでチェックしてみたところ、ゲーミングノート向けのテスト「Sky Diver」で4737、ミドルレンジパソコン向けの「Cloud Gate」で8192と、インテル UHD グラフィックス 620よりも1~2割ほど高い結果になった。
3DMarkスコア | |
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Fire Strike | 1319 |
Sky Diver | 4737 |
Cloud Gate | 8192 |
ゲーム系のベンチマークもいくつか試してみた。まず、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」は次のようになった。
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト スコア | |||
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グラフィック設定 | 解像度 | スコア | 評価 |
低品質 | 1920×1080 | 7817 | とても快適 |
標準品質 | 1920×1080 | 6692 | 快適 |
最高品質 | 1920×1080 | 5303 | 快適 |
同様に「FINAL FANTASY XIV: 紅蓮の解放者 ベンチマーク」も試してみた。
FINAL FANTASY XIV: 紅蓮の解放者 ベンチマーク | |||
---|---|---|---|
グラフィック設定 | 解像度 | スコア | 評価 |
標準品質 | 1920×1080 | 2880 | やや快適 |
結果を見てわかるように、ドラゴンクエストXならフルHDの最高品質でも快適にプレイできる。比較的重いFINAL FANTASY XIV: 紅蓮の解放者でも、標準品質ならそこそこ快適に楽しめることがわかった。
バッテリー駆動時間は必要十分
本製品のバッテリー駆動時間は、カタログ値で最大約11時間となっている。そこでバッテリーベンチマークソフト「BBench」を使って実際にどのくらい持つのかを計測してみた。なお、電源プランは推奨設定、電源モードは「より良いバッテリー」、画面の明るさは「50%」にし、BBenchは「60秒間隔でのWeb巡回」と「10秒間隔でのキーストローク」にチェックを入れて満充電状態から電源が落ちるまでの時間を計っている。
その結果、5時間35分の駆動が可能だった。公称値には及ばなかったものの、ちょっとした会議や打ち合わせくらいならACアダプターがなくても問題なさそうだ。
ちなみに、画面の明るさが50%といっても室内で使うには十分すぎる明るさなので、作業内容によってはもう少し明るさを落としても問題ないはず。また、プリインストールされているユーティリティ「HP Command Center」を使えば、ファンやCPUパフォーマンスの制御を行うこともできる。今回は「オートモード」でバッテリーテストを行ったが、ファンをほぼ静止してCPUパフォーマンスも下げる「サイレントモード」などにして画面輝度を抑えれば、より長持ちすると思われる。利用シーンに合わせて設定を見直してみてほしい。
コスパの良さが魅力的な高性能2in1 PC
AMD Ryzenプロセッサーを搭載することで高性能と高コストパフォーマンスを両立した「HP ENVY 13 x360」。
日本HPの直販サイトでは、本稿執筆時点でお買い得キャンペーンが実施されており、ベーシックモデルが75,000円、今回試したスタンダードモデルが85,000円(いずれも税抜)からと、さらにお得感がアップしている。洗練されたデザインのノートを探している人や、コストパフォーマンスに優れた高性能なノートPCを探している人には、ぜひ注目してみてほしい。
HP ENVY 13 x360 スタンダードモデルの主なスペック | |
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製品名 | HP ENVY 13 x360 スタンダードモデル |
CPU | AMD Ryzen 5 2500U |
メモリー | 8GB |
ストレージ | 256GB SSD(PCIe NVMe M.2) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレー | 13.3型ワイド(1,920×1,080ピクセル) |
通信機能 | 無線LAN(IEEE 802.11a/b/g/n/ac)、Bluetooth 4.2 |
インターフェイス | USB Type-C 3.1 Gen2×1(電源オフUSBチャージ機能対応)、USB 3.1 Gen1×2(うち1ポートは電源オフUSBチャージ機能対応)、ヘッドフォン出力/マイク入力コンボポート |
本体サイズ/重量 | 幅306×奥行き215×高さ15.0~16.0mm/質量約1.31kg |
バッテリー駆動時間 | 約11時間 |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
2018-12-17 04:19:40